今後は、「プロゴルファー藤田寛之像」を考えていく時期。

昨年は3勝という結果でしたね。

一昨年は25位という結果で、前の年の賞金王から一気に落ちた年だったので、年齢からくるものなのか、技術的なものなのかという葛藤を抱えながらオフを過ごしていました。そして、原点回帰でもう一度自分のゴルフを見つめなおしてシーズンを迎えたのが昨年でした。そういった状況で3勝ですから、結果から見ると非常に良くて、自分としても満足できる年でした。

今年の目標としては。

「何勝したい」「海外のメジャーに行きたい」といった具体的な目標が数年前はあったのですが、今は段々そういうのもなくなってきて、ゴルフに対する自分の姿勢だったり、人が見て何かを感じてもらえるようなプロになりたいなって、段々抽象的な目標になってきました。その一つは、自分が今までゴルフから学んだことや得たことを、今度は誰かに提供したいと考え始めています。

成績に関してはいいに越したことないんですけど、自分も選手としてレギュラーのツアーでは最終形に入っていきますので、これから5年10年は、プロゴルファーとしての見え方とか、「あの人やっぱりプロだよ」と言われるようなプロになりたいですね。目先の結果よりもそういった「プロゴルファー藤田寛之像」をこれから5年10年で作っていくのかなと最近は考えています。もちろん、応援してくれる方には、優勝という形で恩返しを表現できたらと思っていますが。

 
 

 2015年はどういう藤田寛之を?

自分は決して「魅せるゴルフ」というか攻撃的なゴルファーではないので、どちらかというと、見ていても「我慢」とか「辛抱」みたいな地味なゴルファーなんですよね(笑)
最近はよく中年って言われるようになってきて、自分と同世代や上の方からも頑張って欲しいと言われます。そういう方から「勇気をもらった」「感動した」と言ってもらえるのは嬉しいですね。「藤田が頑張ってるからおれも頑張っていこう」とか、そういったことを思ってもらえるようなプレーをお見せすることができればいいなと。
それはもしかしたら優勝した華やかな姿かもしれないし、もしかしたらケガをして苦しんでいる姿かもしれない。でも、いずれにせよ、みなさんが頑張れる材料になれればいいなって思います。

周囲の人たちに刺激を与え、
後輩には自分の経験を伝えていきたい。

「TEAM SERIZAWA」としては。

このチームは、芹澤プロを始め、宮本、上井とレギュラーでは自分を含めて4人います。
非常にいいのは、師匠という絶対的な存在で、全信頼を置いている方がいる。そして、自分のプロデビューからの永遠のライバル宮本がいる。もうひとり、若手で元気のいい上井のパワーも感じられるということ。だから相乗効果というか、チームとしての良さがあり、刺激を受けながら自分自身のステージをどんどん高めていけるんです。

刺激を受けているのはお互いになので、自分が上にいくことによってみんなの刺激にもなっていると思いますし、チームの価値観もレベルも高まっていると思います。みんながそれぞれ頑張らないといけないんでしょうけど、自分はチーム内で力をつけてきているのは間違いないので、そういうのが長く続けていけたらいいなとは思っています。

ツアー全体としては、今後どんなことを意識して戦っていきますか?

一昨年は25位でしたが、それ以外はここ最近1位・2位・5位などトップファイブに入っていたわけですから、自分の中では麻痺してしまっているんですけど、周りの期待は自分が思った以上に高いんですよね。勝って当然だとか、ベスト5にいて当然だと見られているので、それを可能な限り維持していきたいと思っています。
去年の3勝も「キタな」とか「強いな」と思われるような勝ち方ができて……ベテランですからね、そういう勝ち方ができるのは理想的です。元気いいときばっかりじゃないですけど、「勝負どころではやっぱりすごいな」みたいなところを見せられるようにやっていきたいですね。

ゴルフ界は年齢幅が広いので、若手とベテランなんて言い方もしますけど、そういった枠を超えて若手には海外にもっと出て行ってもらいたいですね。自分は海外のすごいレベルの高い選手の中で、日本人に活躍してもらいたいという気持ちが強いんです。自分がそうなりたいと思って3〜4年くらい前まではメジャーに行っていたのですが、なかなか打ち砕くことができなくて、石川・松山のように結果が出てきている選手もいるので、世界を知って、壁を打ち破ってくれることをすごく望んでいます。

若手の育成については、どのようにお考えでしょうか?

一人のゴルファーとして携われることは限られていますし、育てていこうとすると日本のゴルフ界全体やいろんな各団体が協力して一つの目標を目指していく必要があります。なかなかそこまで動かす力は自分にはないんですけど、自分には海外での経験、いろんな選手を見てきた経験、その中で実際にプレーをした経験があるので、そういった経験を伝えることはできます。その中で何が必要か、何がいらないかということを自分なりに伝えることができたらな、とは思いますね。

ファンからの嬉しい声によって、動き続けられる。

最後に、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

最近はFacebookやTwitterもあるので、応援してくれる方が非常に多くなっていると自分自身で感じますね。特に男性……の中年の方が多いんですけど(笑)、でもやっぱりその辺りを刺激し続けたいですし、そのためには自分のプレーなり成績なりを高いレベルで維持していかなければいけない。分かりやすく言えば、優勝や優勝争いを常に繰り返していくことによって、ファンのみなさんが生きる元気や、もう一回起き上がる勇気みたいなものを感じて頂ければ嬉しいですね。自分がプロゴルファーとしてプレーしているのは、もしかしたらそういったことを伝える使命があるからなのかもと感じることもあります。もちろん、ある程度は結果が大事ですので、結果を出すために何をしたらいいのかも追求していければと思っています。

特にFacebookのコメントは非常に多くて、全部見させて頂いてますし、それが励みになることも多いです。そういうレスポンスがあることで頑張れるし、動きたくないと思う日もあって……ほとんど毎日ですけど(笑)、でもそういう声があるから動き続けられています。

最近はこういったSNSなんかを通じてみなさんと最短距離で結びつくことができて、声が届きやすくなっているので、非常に大きな勇気をもらっています。